日本画の岩絵の具を「宝石のように美しい」といった作家もいる程。日本画の岩絵の具は神秘的な魅了に溢れています。和紙も知るほどにその魅力に取り付かれます。それらの通常私が使用する画材をご紹介致します。
岩絵の具
日本画の顔料は、大別して「天然絵の具/鉱物」、「新岩絵の具/ガラスに金属酸化物を溶解させたもの」、「合成絵の具/顔料に染料を塗布したもの」、「純天然絵の具/化学合成で天然絵の具に近い組成にしたもの」の4種類に分けられます。
私の場合はそれらに加え「天然染料/植物から抽出した色素」と「ピグメント/水彩や油絵の具の粉末だけのもの。天然鉱物と化学合成物があり」を加えて使用しております。
岩絵の具の粒子
岩絵の具は同じ名前で同じ種類の鉱物から作られても、その粒子の大きさ別に番号が振られております。若い番号ほど粒子が粗く、大きい番号ほど細かくなり1~13(15)まで揃っております。更にその番号を越えるものとして「白(びゃく)/最細」や顔料の種類によっては「特粗」などもあります。
墨
墨は大別して植物を燃焼させた煤で成るもの(松煙墨など)と、油を燃焼させた煤で成もの(油煙墨)があります。その色合いは植物や油の種類、更には経年によっても変わります。現代では松煙墨の流通はかなり少なく、油煙墨が主流です。油は菜種油が多いですが、中には「竹油」や「椿油」を原料としたものもあり、独特の発色をしております。
一般的に松煙墨は青墨、油煙墨は茶色と言われておりますが前述の理由で青墨が少なくなった現代では油煙墨に染料や顔料を混ぜて青墨とする製品も多くなりました。
硯
硯の摺り方のみならず、石の質によっても墨の発色が左右されます。私は現在、高級硯として名高い国産の「雨畑硯」と「雄勝石」を主に使用しております。ただ、染料を多く含んだ「色墨」は高級石の目詰まりの原因となり、著しく質を低下させるので、外国製の手ごろな価格の硯で摺っております。
我が父より受け継いだ中国の銘品「端渓」、そして国産の「那智黒」かなりのヴィンテージものです。
染料
私は通常、和紙は「生」の状態で購入します。その方が墨の発色に自由度が高まる事と、ドーサ(滲み止め)を引く前に紙自体に色をしみこませることが出来るからです。植物性の染料は和紙を優しい色合いに染めてくれます。特に使用頻度が高いには以下の染料です。
・茜 ー 赤茶色
・紅花 ー 淡朱
・黄蘗 ー 明黄
・鬱金 ー 深黄
・丁字 ー 茶色
和紙
和紙は3X6(90cm x 180cm)を超えるものは「高知麻紙」。それ以内のものは山梨県の伝統工芸品でもある「西嶋和紙」を使用しております。西嶋和紙は山梨県身延町の「山十製紙」さんに発注しております。受注生産なので原料である「楮」、「三椏」、「麻」などを自分の好きな配合で発注できるので独自の風合いを選択することが出来ます。
筆
日本画要の筆から書道用、水彩用、油彩用など用途に合わせて使い分けます。日本画用は、「長流」、「則妙」が基本。渋谷のウエマツ画材店で新規発売となった「年賀筆」も重宝しております。
水彩用の扇状筆は擦れで使用すれば雨滴の表現などに適しています。油彩の豚毛筆は粗いタッチが表現できます。
刷毛
漆塗りのしっかりとした「絵刷毛」、ドーサ引き専用の「ドーサ刷毛」、水張り用の「水刷毛」など用意とに応じて揃えております。高価な絵刷毛は確かな作りで20年以上経過しても軸に劣化が殆どありません。
大下図用 デッサン用具
本画作成の前に必ず原寸大の「大下図」を作成します。ラフに構図を掴み、構造物などの形態を把握するためです。大下図の作成は、はっきりとコントラストを付けると、簡便なライン引きでも全体感が把握しやすいので木炭やコンテを使用します。